デヴィッド・ラズリー/If I Had My Wish Tonight

 今回のAOR名曲紹介は、ミスターAORの一人と言っても過言ではないAORミュージシャン、デヴィッド・ラズリーです。彼のソロ名義のアルバムの中でもダントツでAOR色が強いのは、やはり1982年にリリースした「MISSIN' TWENTY GRAND」ですが、今回はA面2曲目に収録されていた「If I Had My Wish Tonight」を紹介します。

 彼の音楽的キャリアは古く、10代のころから活動をしていたようです。彼の最大の魅力である美しいファルセットは、ときに優しく、ときには切なく感じます。それだけに女性的な歌詞の曲が非常によく似合うアーティストです。今回の名曲は、一緒になれない男女を女性的な視点で歌った歌ですが、別れの歌とはいえ、決して暗い曲調ではなく、メロディの美しさにより素晴らしい楽曲に仕上がっています。作曲者は、おなじみのランディ・グッドラムとデイヴ・ロギンスです。この曲も、もともとデイヴ・ロギンスのアルバム「DAVID LOGGINS」(1977)に収録されていたもので、デヴィッド・ラズリーのバージョンは、このアルバムからのヒット曲になりました。

 また、数多くの一流ミュージシャンがサポートしているのも、アルバム「MISSIN' TWENTY GRAND」の魅力です。今回の名曲「If I Had My Wish Tonight」では、デヴィッド・ベノワ、マーティ・ウォルッシュ、ボニー・レイット、そしてウィリー・ウィルコックスなどです。その他には、ジェームス・テイラー、アーノルド・マッカラー、ルーサー・ヴァンドロス、ジェリー・ヘイ、チャック・フィンドレー、アニー・ワッツ、ヴィクター・フェルドマン。ストリングス・アレンジに、アリフ・マーディンにニック・デカロと最強です。

 アルバム全体には、ブルーアイドソウル感が漂い、AORアルバムとしても上出来です。決して、都会的な洗練された音楽とは違いますが、モータウンの匂いが感じられる、なんとも言えない良い雰囲気が、またたまりません。

 デヴィッド・ラズリーは、この前にも、グループ「ロージー」名義のアルバムや、数枚のソロアルバムをリリースしていますが、どのアルバムも上質なAORアルバムです。他のアーティストへの楽曲提供も多く、まさにミスターAORと呼べるでしょう。

 これまでにも、多くのAORアーティストを紹介してきましたが、一発屋ではない、常に上質な曲を提供するアーティストとして、絶対にはずせない存在です。そんなデヴィッド・ラズリーの「If I Had My Wish Tonight」を是非聴いてみてください。(Night-Plane)

 

 

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スティーブ・ドーフ/A Little Thing Called Life

 ここ数回は、本来のAORが持つロック寄りな名曲を紹介しましたが、今回は、しっとりと聴かせる名曲を紹介します。

 スティーブ・ドーフは、アメリカではテレビドラマのテーマ曲や、他のアーティストに楽曲を提供する、いわば裏方のソングライターとして活躍している人ですが、彼が楽曲を提供したアーティストは、アン・マレーやケニー・ロジャース、エディ・ラビット、B.J.トーマス、ジョージ・ストレイトなど数知れず、どちらかというとカントリー系やポピュラー系の歌手に馴染みがある人のようです。プロデュースやアレンジしたアーティストにも、クリストファー・クロスやメリサ・マンチェスターなどのAOR系アーティストもおり、顔の広さと仕事の幅の広さを感じる人です。

 さて、今回紹介する名曲は、そんな彼が自分名義でリリースした限定アルバム「ORIGINAL DEMO(2004)からの1曲「A Little Thing Called Life」です。1995年に、アーロン・ネヴィルの「The Tatooed Heart」によって、取り上げられた曲です。

 アルバムのオープニングにふさわしい1曲で、ピアノのイントロから入る、とても雰囲気のある甘い感じの名曲です。日常の出来事を決して大げさに捉えず、「月は沈み、また日は昇る」的な、一日の繰り返しが日常生活であり、そんな些細なことが、毎日の生活であり、人生であり、本当に小さな出来事の連続だが、それは奇跡的なことである、と歌います。そして、毎日を過ごせることに感謝すべき、と歌います。

 決して、宗教的な歌ではありませんが、ラブソングとは違う観点で、このようなことが歌われるのは、とても新鮮です。しかも美しいメロディとサビの素晴らしさに乗せて。CCMとは、違う感動ですよね。

 このアルバムは、全編、ウォーレン・ウィービーがヴォーカルを取り、伸びやかに歌っていますが、全曲が素晴らしい出来です。デモ集とは思えないくらいです。他のアーティストに提供した曲の自身のカバーもありますが、スティーブ・ドーフの才能と魅力を十分に見せつけてくれます。どの曲も派手さはなくシットリとした曲ですが、聴く価値は十二分にあります。ただし、1000枚限定なので、手に入りにくいかも知れません。

 AORアーティストとしては、表には出てこないスティーブ・ドーフですが、職人として、「良い仕事してますね~」と、いった感じです。今回の名曲「A Little Thing Called Life」は、機会があれば是非聴いてみてください。きっと、心に響きますよ。(Night-Plane

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ブロック・ウォルシュ/Paper Doll

 前回のテレンス・ボイランの流れを受けて、今回もロック寄りのAORを紹介します。今回、紹介するアーティスト、ブロック・ウォルシュと言えば、自身のアルバムよりも他のアーティストへの作品提供の方が最近は多く、今では、職人的な裏方というイメージの強いシンガーソングライターですが、彼が1983年にリリースしたアルバム「DATELINE:TOKYO」は、その時代を象徴するかのようなテクノ的な要素を盛り込んだ良質なAORアルバムです。

 AORアーティストの作品には、当時、「TOKYO」の地名がタイトルにつけられることがしばしばありましたが、このアルバムのタイトル曲は、はっきり言って聴いてるこちらが恥ずかしくなるような曲で、「TOKYO」「YOKOHAMA」「ROPPONGI」は、まだ許せるにしても、「BUSHIDO」までも日本語が出てくると、とても安っぽく聴こえてしまい、これはいったいどうなの?と、いう感じになります。今聴くと、曲調もヒューイルイス・アンド・ザ・ニュースの「The Heart of Rock and Roll」のようで、リリース時期も微妙に近いし・・・。まっ、そんなことで、リリース当時は、そんなに聴きこまなかったのですが、そんな中でもやはり名曲はあるもので、今回紹介する名曲「Paper Doll」は、一見、日本のポップスのような雰囲気ですが、アップテンポでなかなかカッコ良い曲です。

 「モデルとしてもてはやされる女性も、実はまだ少女の心を持ち、背伸びをしながら社会を生きる寂しさと孤独を背負っている」という内容を曲の歌詞にしています。この手の題材は当時としては良くありがちですが、メロディーやサビの盛り上がりなど、トータルな仕上がりを見るといかにも売れ線狙いの実に良い作品です。AORの基本、しっかりとロックしています。

 このたぐいの曲を聴くと、やはりAORはカッコ良いと感じますね。

 このアルバムには、アンドリュー・ゴールドがプロデュースとミュージシャンで参加しているほか、スティーブ・ルカサー、ジェフ・ポーカロ、マイケル・ボッツ、ケニー・エドワーズ、トムとディヴィーのファラガーブラザース、グレッグ・プレストピノ、マッシュー・ワイルダーなど、多彩なミュージシャンが関わっています。作曲にも、自身の作品以外にも、グレン・バラードやマーティン・ブライリーなど個性豊かな面々がサポートしています。

 また、「Paper Doll」のようなアップテンポな曲調とは反対に、スローナンバーでもしっかり聴かせてくれます。なかでも「Mystified」は絶品です。また、「Getting Over Losing You」や「Our Special Love」も相当グッドです。その他、典型的な爽やかAORの「This Time」や「Sweet Emotion」もオススメです。

 たまに、先走って先駆的なことをするブロック・ウォルシュですが、(このアルバムでも、新しいロック感覚を試しています)、基本はやはりAORの要素が強く、心に染みてきます。

 ブロック・ウォルシュ作の楽曲は、色々なアーティストの作品で目にすることができますので、彼の名前を探してみるのも楽しいですよ。単なるロック歌手とは違う職人気質のAORアーティストは、やはり良いものですね。(Night-Plane)

 

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テレンス・ボイラン/Did She Finally Get To You

 前回のAOR名曲紹介は、オシャレな曲というより、男性的な匂いのするファラガーブラザーズの曲を取り上げましたが、今回も男臭さがたまらない1曲です。

 以前に、ディン・ドナヒューの回に登場したAORアーティスト、テレンス・ボイランです。彼の作品は、フェンダーローズがオシャレに鳴り響くようなロマンティックな世界とはほど遠く、むしろ骨太なサウンドに歌い方、しかも決して歌が上手いとは言えない歌唱力なのですが、単なるロックとして片付けてしまうにはもったいないアーティストです。デイン・ドナヒューもテレンス・ボイランのプロデュースで、彼に近い雰囲気をアルバムに持っていました。

 今回、紹介する名曲は、男臭く、しかしながらAOR的ポップスセンスを持った、基本的にはロックの「Did She Finally Get To You」です。1980年にリリースされた3枚目のアルバム「SUZY」からのハイライト曲の一つになる曲です。ローズピアノからフェードインしてくる甘いイントロから一転し、太いテレンス・ボイランの声、しかもギターがしっかり自己主張していますが、決して安っぽいロックにはなっていません。ところどころに入るピアノや、ローズピアノの優しい音色は、「基本はロック。でもオシャレ」といったAOR的な絶妙なバランスを醸し出しています。特にサビの「Did She Finally Get To You~」は、カッコ良いです。この曲のバックミュージシャンには、ジム・ゴードンのドラム、マイク・ポーカロのベース、ジェイ・ワインディングのピアノ、ヴィクター・フェルドマンのコンガと、お馴染みAORミュージシャンに、ギターで目立つジェイ・グレイドン。コーラスのドンヘンリーとティム・シュミットと豪華です。他の曲では、マイケル・オマーティアンやエド・グリーン、ジェフ・バクスター、ラリー・カールトン、ドン・フェルダーなどが参加し、当時だから出来たようなナイスな面子です。

 テレンス・ボイランは、摩天楼が似合うアーティストでもなければ、夜が似合うような雰囲気が曲にあるわけではないのですが、鍵盤楽器にハーモニーの使い方、そして優しい歌い方がAOR的センスを感じさせるのかもしれません。スローバラード系にいたっては、カントリーロックさも感じさせますが、歌詞やメロディーの良さが、AORにありがちな哀愁を感じさせてくれます。

 もともとテレンス・ボイランといえば、ファースト・アルバム「ALIAS BOONA」(1969)でのドナルド・フェイゲンやウォルター・ベッカー参加によって、AORの印象を植え付けている部分が大きいのですが、このファーストは決してAORではありません。むしろセカンドの「TERENCE BOYLAN」(1977)の方がよりAOR的なアルバムと言えるでしょう。

 「TERENCE BOYLAN」と「SUZY」は、AORアルバムの中でも個人的によく聴いたアルバムで、AORの良さをしみじみ伝えてくれる良盤です。今のシンセや打ち込みの安いバラード系AORとは違い、実に奥が深い。こういうのをAORの原点と言ってくれる人が少ないことに最近は特にがっかりです。怪しい曲のひねりをスティーリーダン・フォロワーと言ったり、薄っぺらく安っぽいサビのラブソングめいたものAORと言ったり、「AOR」が日本発祥の造語とはいえ、20年以上前とはAORのイメージが変わりつつある今日この頃に悲しさを覚えます。

 AORって、ある意味、「男」が哀愁や渋さに浸るための男側から観た感情が、歌詞や曲の中心にあったはずですが(もしくは社会風刺的な歌詞だったり)、最近は解釈が変わってきたのでしょうか?

 ともかく、男の渋さ=カッコ良さを追求した楽曲を、最近のAORアーティスト、またはAOR好きミュージシャンと呼ばれる人たちに書いてもらいたいですね。そんなことを感じるにはピッタリの名曲、そしてアーティスト、テレンス・ボイランを是非聴いてみてください。(Night-Plane)

 

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ファラガー・ブラザーズ/Go Where We Want To

 春になり、気持ちも晴れやかで、ウキウキとした気分で出かけたい季節ですよね。今回は、そんな時にピッタリな1曲です。グループ名のとおり、ファラガー兄弟からなるグルーヴィーなグループ、ファラガー・ブラザーズの名盤ファースト「FARAGHER BROTHERS」(1976)から、「Go Where We Want To 」を紹介します。

 AORファンには、お馴染み、ブルー・アイド・ソウルの感覚タップリのサウンドは、聴いていてウキウキせずにはいられません。グループは、ジミー、トミー、ダニー、デイヴィーの4人。トミーとデイヴは、昔のアルバムを漁っていると、時々、他のアーティスト・アルバムにも名前を見かけますが、現在の活動はよく分かりません。ただ、彼らのソウル的なサウンドは実にカッコ良いです。1曲目の「The Best Years Of My Life」からノリ良くスタートし、次の「Never Get Your Love Behind Me」で、少し控えめにポップスっぽく聴かせるところは、AORのツボを良く押さえています。また、エレピにシンセ、オルガンと、鍵盤の使い分けがまたまた「たまらない」といった感じです。アルバムの全体をグルーヴィーな曲が占め、春のドライブにはピッタリです。

 特に今回オススメの「Go Where We Want To 」は、決してソウルフルな曲ではありませんが、曲のテンポや歌詞がとても気持ち良いです。晴れやかな日に、曲のリズムに合わせて歩くと、とてもウキウキした気分になりそうな1曲です。

 ファラガー・ブラザーズは、アルバム3作目の「OPEN YOUR EYES」(1978)が、AORファンの中でも指示され、2作目の「Famili Ties」でも、ジェイ・グレイドンで話題になっていますが、個人的な作品の好みとしては、このファーストが1番ですね。何しろ、勢いのあるグルーヴ感がたまらなくカッコ良いの一言に尽きます。白人にして、この黒っぽい感覚。けれど、しっかりロックしている。

 こんなカッコ良いアルバムを知らないでAORは、語れませんよ。春の爽やかな風を受けながら、聴いてみて下さい。(Night-Plane)

 

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ザ・デュークス(ブガッティ&マスカー)/Mystery Girl

 これまでにも色々なタイプのAORを紹介してきましたが、やはりAORを象徴するキーワードといえば、「夜」、「大人の恋のかけひき」、「お洒落」ですね。今回は、そんな言葉がピッタリなカッコよい名曲を紹介します。

 イギリス出身のソングライターコンビ、ザ・デュークスは、数多くのアーティストに楽曲を提供していましたが、本人たちのアルバムは1982年にリリースされた「THE DUKES」のみ。いわゆる、AORの得意とするワン・アンド・オンリー的なアルバムなのですが、そのクォリティーの高さは、AORファンからも絶賛されるほどです。

 特に、今回の名曲「Mystery Girl」は、アルバムのオープニングを飾る曲だけあって、テンポがあって、とてもノリのよいカッコよいナンバーです。キーボードとシンセの使い方がとてもお洒落で、甘い雰囲気を醸し出しています。歌詞も、「君を知れば知るほど、君は何てミステリアスな女性なんだ。」と、知らず知らずにハマッてしまう、危険な香りさえします。う~ん、ありきたりではありますが、とても、お洒落です。

 このアルバムは、プロデューサーにアリフ・マーディンを迎え、ミュージシャンには、AORやフュージョン系のメンツ、ロビー・ブキャナン、ジェフ・ポーカロ、ジョン・ロビンソン、ウィル・リー、エイブ・ラボリエル、スティーヴ・ルカサー、ポール・ジャクソン、カルロス・リオス、ポウリーニョ・ダ・コスタなどが、名前を連ねます。しかもランディ・ブレッカーやリチャード・ティーまで参加しています。ここまでメンツが揃うと、たまに楽曲負けすることもあるのですが、ザ・デュークスの2人、ブガッティ&マスカーのソングライティング力は素晴らしく、どの曲も全く飽きません。アルバムの半分ぐらいは、ディスコというかダンス・ミュージック的な感じですが、「Memories」や「So Much In Love」のようなAOR的ど真ん中サウンドもしっかり押さえていますので安心です。

 この2人は、シーナ・イーストンの「Modern Girl」やエア・サプライの「Every Woman In The World」のようなヒット曲のライターでもあり、もともと一流のポップセンスを持っていたようです。

 それにしてもザ・デュークス名義のアルバムが、この1枚だけというのは、実に残念です。アルバム・ジャケットもDukesを意識してか、夜の街に繰り出す独身公爵といった趣きで、洒落た男の薫りが漂っています。

 今でもソングライティング・ユニットは多くいますが、ソウル・ポップスのセンスを持った、ザ・デュークスのようなコンビは、とても懐かしい反面、最近では流行も変わり、ほとんど見かけません。

 こんな独身貴族の洒落た遊びを演出するようなAORの名曲とともに、夜の街に飛び出してみませんか?怪しげな大人の恋が待っているかも。(Night-Plane)

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ビル・チャンプリン/Gotta Get Back To Love

 前回から、再び再開されたAOR名曲紹介ですが、今回はAORの定番アーティスト、そして定番サウンドを紹介します。

 このAOR名曲紹介でも度々登場するビル・チャンプリン。AORファンにとっては、欠くことのできない存在です。彼が、バックミュージシャンやサポートメンバーとして関わっているアルバムであれば、名前の知らないアーティスト・アルバムでも安心といった、レコード時代にはジャケ買いする時の目安にもなった安全パイ的な人です。また、最近では、シカゴのメンバーとしても有名ですが、彼の長いキャリアから考えると、シカゴよりもソロ・アルバムから名曲を紹介するのが自然な流れでしょう。個人的には、シカゴはシカゴで、ブラスロック全快のサウンドや「16」あたりのピーター・セテラの美しいメロディーは好きなのですが、ビル・チャンプリン加入後からは、特徴が薄れてきたというか、ビル・チャンプリン自身も良さがなくなってきたからか、あまり感心しませんが..。

 とにかくビル・チャンプリンの存在は凄い。特に、ソロになりリリースした「SINGLE」(1978)は、傑作といって間違いないでしょう。デヴィッド・フォスターのプロデュースに、TOTOの面子がバックにつき、ジェイ・グレイドンも作曲面とギターでしっかりバックアップしています。「What Good Is Love」「Love Is Forever」「Elayne」「We Both Tried」など、良い曲が多いです。アルバムとしても、適度にロックしていて気持ち良いです。

 但し、今回の名曲は、「SINGLE」をよりAOR的に進めたセカンドアルバム「RUNAWAY」(1981)から「Gotta Get Back To Love」を選びました。前作に続き、デヴィッド・フォスターをプロデュースに迎えていますが、バックのミュージシャンは多彩です。ジェイ・グレイドンやスティーブ・ルカサーは変わらずですが、ジョン・ロビンソンやエド・グリーンのドラム、エイブラハム・ラボリエル等のベース、ジェリー・ヘイのホーンに、トム・スコットのサックス、そしてコーラスにリチャード・ペイジにトム・ケリーと、一層、豪華になったアルバムです。

 今回、ビル・チャンプリンの曲ではなく、トム・ケリーの曲を選んだのは、この曲がAORには欠かせない海岸のイメージを多分に含み、メロディーがこれぞAORといった雰囲気を良く持っているからです。ジェイ・グレイドンのギターもしっかり自己主張するし、バック・コーラスもゴールデン・メンバーによるこれぞAORコーラスと言わんばかりの控えめで、美しいコーラスです。個人的には、サウンドの作りやハモリ方が実にAORしていると思える作品で、非常に好きな曲です。歌詞的には、昔のような2人の愛に立ち返らなければ、という少し危機感のある恋愛物語ですが、曲調は最高です。

 確かにアルバム内にあるロックしたビル・チャンプリンも魅力ですが、少しかすれ気味の声に切ないサウンドが、またたまらない一品です。

 日本の企画物アルバムのビル・チャンプリンには、何度、泣かされたことか。やはり80年代のビル・チャンプリンの歌声が良い。若々しく弾んでいる、ビル・チャンプリンを、一度は是非味わってみて下さい。(Night-Plane)

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ケニー・ロギンス/The Real Thing

 またまた前回からだいぶご無沙汰してしまったAOR名曲紹介。久しぶりの1曲は、お洒落な路線から少し離れた、心温まる名曲ケニー・ロギンスの「The Real Thing」です。

 AORファンからすれば、恐らく、「何で、The Real Thingなんだ!」とのブーイングも聞こえてきそうですが、あえてこの曲を選んでみました。

 ケニー・ロギンスといえば、言わずと知れたアメリカでは大御所ロック歌手です。1970年代には、ジム・メッシーナとともに、ロギンス&メッシーナを結成し、名盤「SITTIN' IN」(1972)や名曲「Your Mama Don't Dance」を含んだ「LOGGINS AND MESSINA」(1972)など、カントリーロック的な名盤を数々生んできました。

 その後、ソロとして活動し始めると、彼が本来持ち合わせていた、ロックかつソウル的な感性が開花し、AORの大名盤といわれる「NIGHTWATCH」(1978)がリリースされます。AORのバイブル的存在のこのアルバムには、「Whenever I Call You Friend」「Wait A Little While」「Nightwatch」など、単なるロックでは片付けられない秀作が満載。更には、AORとしても魅力十分な、グラミー賞を受賞したドゥービーブラザースの永遠の名曲「What A Fool Believes」と、AOR時代の始まりを予感させる作品が沢山収録されています。

 3作目のアルバム「KEEP THE FIRE」(1979)でも、リチャード・ペイジとの共作「Who' Right, Who's Wrong」を生むなど、彼の本領発揮といったところです。AORファンとしては、恐らくこのあたりの曲が彼の名曲として、相応しく思うかもしれません。間違っても、「フットルース」や「デンジャーゾーン」のような曲調が、彼のセンスと思ってはいけません。

 とにかく彼自身もソロとしての新しい音楽性を試行錯誤しながらアルバムをリリースしてきました。ところが、1988年の「BACK TO AVALON」までとはうって変わり、今回紹介する名曲が含まれるアルバム「LEAP OF FAITH」(1991)では、それまでの男女関係や恋愛関係をテーマにしてきたのが、家族や自然の営みなどのとてもヒューマン的な部分に着目し始めます。

 特にアルバム全体を、1つの物語のように、松居和の尺八や効果音でつなぎ、「家族愛」という壮大なテーマを持たせている印象を受けます。

 今回の名曲「The Real Thing」は、収録曲の中でも非常にメッセージ性が強く、家族の愛や絆の大切さを語りかけます。歌詞の良さはもちろんのことですが、デヴィッド・フォスターとのメロディーも非常に心地よく、安らぎを与えてくれる作品です。純粋に、名曲として楽しめます。

 このアルバムからの作品は、全てがとてもスピリチュアルな印象を受け、心に染みる作品が多いです。ライター陣もウィル・アッカーマンやガイ・トーマスなどアルバム・コンセプトを意識したかのような面々です。

 1曲目の「Will Of The Wind」の安らぎからスタートしたかと思うと、「Leap Of Faith」でアップテンポになり、名曲「The Real Thing」へつながり、以降も緩急を上手く使い分け、流れるような構成になっています。しかもどの曲も素晴らしいサウンドです。

 かなり個人的な思いが強いですが、歌詞も含めた楽曲の良さ、アルバムの構成からして、まさにもう1つのAOR(アルバム・オリエンテッド・ロック)に相応しい名盤でしょう。

 多少、歌詞に宗教がかっているところは否めませんが、たまには純粋に「家族」や「絆」について考えるのも良いかもしれません。このようなアルバムからAORの良さを再認識するのも良いのでは...。

 ちなみに、このアルバム「LEAP OF FAITH」以降、ケニー・ロギンスの作品は、家族愛についてのテーマが強くなっていきます。昔のような甘くて、ムードのある恋愛ソングも久しぶりに聞いてみたいと、ファンとしては思うのですが、とても複雑な心境です。そんなことも思いつつ、家族の中の真実“The Real Thing”を考えてみて下さい。(Night-Plane)

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ビル・カントス/Who Are You

 2月も半ばになり、ヴァレンタインデーも近くなりましたが、今回はカップルにピッタリの甘いムードを持ったAOR名曲を紹介しましょう。

 AORの世界ではお馴染みのアーティスト、ビル・カントスが作った「Who Are You」は、新しいジャズ・スタンダードとも言うべき、ジャズのムードを十分に持った名曲です。ミステリアスな魅力を持った彼女を、可憐な花や美術館の彫刻にたとえ、その美しさに心が惑わされる様子を詩的に表現した美しい曲です。「君は誰なんだい」というフレーズが、綺麗なメロディーにマッチし、とても印象的な仕上がりです。

 「Who Are You」は、ビル・カントスのソロアルバム「WHO ARE YOU」(1995)に収録されている曲ですが、このアルバムにはAORファン好みの曲が沢山です。オープニングの「Come Down (Two Words)」はテンポの良い、良質なポップスといった感じで、アルバムのスタートをわくわくさせます。その後にはスローナンバーの「Beautiful One」「Heart Of Hearts」「Endress Nights」やポップスナンバーの「Daddy's Gonna Miss You」「One More Stone」、またユートピアの名曲「Love Is The Answer」などが続き、聴きやすい曲で構成されています。プロデュースには、マイケル・シャピロ、リッキー・ローソン、ビル・シュニー、そしてジェイ・グレイドンのAORに馴染みのある4人が曲ごとに関わっています。

 「Who Are You」は、ビル・カントスの2006年のアルバム「LOVE WIN」でも聴けますが、個人的にはこちらのバージョンのほうがよりジャズ志向が強く、オススメです。このアルバム自体もジャズ・アルバム的に楽しむことも出来ます。但し、ジャケットのビル・カントスは、無精髭にピンボケ写真で、あまりイケていないのですが。

 ともかく「Who Are You」は、何とも甘いムードを持ったAORの名曲で、キャンドルライトで過ごす夜にはピッタリくる1曲でしょう。ヴァレンタインにあわせて曲を選ぶなら、絶対に外せません。ミステリアスな魅力を持つ彼女との夜に、是非、聴いてみて下さい。必ず、素敵な一夜になるはずです。(Night-Plane)

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トニー・ストーン/Life After Romance

 1月24日にめでたく「Muse」がオープンしました。「音楽」にこだわったお洒落なお店「Muse」に負けないくらいに、このAOR名曲紹介も今までと変わらずにお洒落なAORをお届けしていきます。

 今回の名曲は、AORのアーティストには名前を連ねませんが、アルバムの出来のよさで選んだ1曲です。トニー・ストーンの「Life After Romance」は、バラード系では間違いなく名曲といえます。もともとネッド・ドヒニーの曲で、彼が当時久しぶりにリリースしたアルバム「LIFE AFTER ROMANCE」(1988)に収められていた曲ですが、トニー・ストーンなりにムードありげに歌い上げています。

 そもそもトニー・ストーン自体がどのような経歴かは良く知りませんが、アルバム「FOR A LIFETIME」(1988)にリリースされた際に、すかさずスマッシュ・ヒットを放ったのが、弾むような爽やかなサウンドの「Can't Say Bye」でした。当時、FM曲では良くかかっていたような記憶もありますが、リック・アストリーのディスコチックなサウンドがもてはやされていた時代に、アルバム内のアップテンポな曲の数曲がマッチした結果だと思われます。

 しかし、このアルバムの良いところは、ディスコチックなアルバムに終わらないところで、ネッド・ドヒニーの曲を3曲カバーしたり、ジャジーな曲を盛り込んだりと意外に聴かせるアルバムに仕上がっているところです。特にネッド・ドヒニーの「Heartbreak In The Making」や「Perish The Thought」は、ネッド・ドヒニーの本人バージョンよりもノリが良く、パンチが効いていて、とてもカッコ良いです。そして、今回のオススメ曲「Life After Romance」にしても、本家に負けず、なかなかムードのある歌い方にグッときます。バックには、ネッド・ドヒニー本人がギターとプロデュースで関わるほか、アラン・パスカのキーボードなどで綺麗に仕上げたという印象です。

 アルバムには、前記意外にも、ピーター・ベケットやローズマリー・バトラー、リオン・ウェアなどAOR系のミュージシャンも参加しているので安心です。

 確かに曲によっては、一昔前の古臭さを感じないわけでもないのですが、どの曲も非常に聴きやすいものばかりです。

 今回の名曲は、少し感傷的な1曲ですが、(ネッド・ドヒニーは割合にその手の曲が多いのですが...。)たまには大人の恋の終焉をしみじみと味わうのもお洒落かも。(Night-Plane) 

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