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2008年12月

デイン・ドナヒュー/Casablanca

 楽しいクリスマスが過ぎて、もう間もなくで今年も終わろうとしていますが、2008年の最後を締めくくる名曲は、デイン・ドナヒューの「Casablanca」です。

 デイン・ドナヒューにとっては、恐らくワン・アンド・オンリーのAOR名盤「DANE DONOHUE」(1978)からの作品で、アルバムのオープニングを飾る渋い名曲です。

 タイトルのカサブランカは、CDのライナーノーツにもあるように、ハリウッドの名画「カサブランカ」をモチーフにしているものと思われますが、歌詞の内容がとても詩的な味わいを持つ作品です。映画カサブランカのハンフリー・ボガードが表現する男の哀愁や寂しさを、コンクリート・ジャングルの都会に生きる孤独さとオーバーラップさせたような印象を受けます。まさにAORの特徴である都会の中の孤独を上手く表現した名曲です。

 さて、デイン・ドナヒュー自身については、ティーン時代からロックを始め、様々なオーディション等を経て、このアルバム制作に至ったようですが、その後の活動においては、あまり目立った活躍もありません。個人的には、彼のソングライティングはAOR的な視点からかなり優れていると思うのですが、アルバム「DANE DONOHUE」の1作のみで終わってしまっているのが実にもったいないような気がします。

 ところで、このアルバムには豪華なミュージシャンが目白押しです。まずプロデュースには、かの有名なドナルド・フェィゲンとも近い関係にあるアーティストで、彼自身のアルバムにおいても男臭さを感じるAORには欠かせない存在、テレンス・ボイランです。カントリーやロックの世界でプロデューサーとしても活躍していたジョン・ボイランの弟ですが、兄とは違うロック・センスを持ち、AOR的なお洒落な感覚を持った人です。彼のアルバム「ALISA BOONA」「TERENCE BOYLAN」「SUZY」は、いずれもAOR名盤です。その他、共にアルバム・プロデュースをしているジェイ・ワィンディング、ギターには、ラリー・カールトンやジェイ・グレイドン、スティーヴ・ルカサーを使い分け、曲の所々で印象的なアクセントとなるヴィブラフォンを演奏するヴィクター・フェルドマン、ドラムにエド・グリーンやスティーブ・ガッド、ベースにマイク・ポーカロほか、またドン・ヘンリー、ティム・シュミット、J.D.サウザー、スティーヴィー・ニックス、トム・ケリー、ビル・チャンプリンなどによるバック・ヴォーカルと、超豪華の一言につきます。

 アルバム全体の印象もロックと一言では片付けられない、ジャジーなムードと、エレピやヴィブラフォンによる都会的なサウンドがたまりません。「Woman」「Freedom」「Can't Be Seen」「Whatever Happened」などは、即ノックアウトです。その一方では、カントリー的なロックで男の魅力を演出します。AORとしては完璧なアルバムでしょう。

 更には、アルバム・ジャケットのデイン・ドナヒューのふてぶてしい眼つきと、タバコに火をつけるしぐさは、言うことがありません。

 ドナルド・フェイゲンの「NIGHT FLY」に匹敵するほどのカッコ良さです。

 こんな名盤、そして名曲「Casablanca」は知らずにいたらもったいないですよ。聴けばAORがもっと好きになるはずです。是非、聴いてみてください。(Night-Plane)

 

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ラリー・カールトン/Ringing The Bells Of Christmas

 1週間ほど経つといよいよ今年もクリスマスを迎えますが、やはり素敵な夜にはAORが良く似合いますよね。今回、紹介する名曲は、特にAORサウンドというわけではないですが、クリスマス・ソングとしてピックアップしました「Ringing The Bells Of Christmas」です。

 この曲が含まれる「CHRISTMAS AT MY HOUSE」は、ラリー・カールトンのアルバムとして1989年にリリースされたもので、はっきり言ってクリスマスのための企画物アルバムです。ラリー・カールトンといえば、ロック、ポップス、ジャズ、ブルースなど、幅広いジャンルで活躍する言わずと知れた超一流ギタリストですが、彼が残したアルバムの中でも1977年リリースの「LARRY CARLTON」は名盤で、その中の「Room335」は超名曲として知られ、彼はギターキッズたちの神様的な存在の人です。過去にはセッション・ミュージシャンとして様々なグループや他のアーティストアルバムに参加し、現在でも第一線で活躍する名プレーヤーです。

 そんな彼が企画したこのアルバム、基本的には、スタンダードなクリスマスソングをラリー・カールトン流にアレンジしているわけですが、中にはこのアルバムのためのオリジナルも含まれています。

 その1つ「Ringing The Bells Of Christmas」は、ラリー・カールトン、ミッシェル・ピラー、ビル・ラバウンティー、ベッキー・フォスターの4人による共作で、作者の一人であるC.C.M.シンガーのミッシェル・ピラーがリードボーカルを取っています。作者のメンツでも魅かれるのですが、参加ミュージシャンがラリーとミッシェルのほかに、キーボードでロビー・ブキャナン、コーラスでクリストファー・クロス、デヴィッド・パック、カレン・ブレイクとAORに馴染みのある人達が参加しています。

 イントロのキーボードからしてクリスマスソングといった雰囲気ですが、メロディが覚えやすくサビの部分も印象的な、いかにもクリスマスポップスと言った感じです。サビ部分のバックに聴かれるクリストファー・クロスの声もファンには嬉しいところでしょう。心温まるクリスマスの1曲として、BGMに仲間入りさせても良い感じです。

 アルバムには、エイブラハム・ラボリエルやジェフ・ポーカロのほか、どちらかと言えばジャズ・フュージョンよりのミュージシャンが多く起用されていることもあり、全体的にクリスマス・アルバムとしても聴きやすい仕上がりになっています。定番の「ホワイトクリスマス」では物足りないAORファンには、こんな企画物も洒落ていて良いかもしれません。

  今年はビング・クロスビーの渋さより、ラリー・カールトンのスムース・ジャズ的なカッコ良いクリスマスアルバムで、より大人のクリスマスを演出してみませんか?(Night-Plane)

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ジェリー・コルベッタ/If I Never Had Your Love

 だいぶご無沙汰してしまいましたSHIZUKUのAOR名曲紹介です。SHIZUKUは残念ながら閉店してしまいましたが、来年オープンする「MUSE」を応援するがのごとく、この名曲紹介は引き続き継続していきたいと思います。

 久しぶりの名曲紹介、今回は冬の寂しさを演出するのにバッチリなふられソング「If I Never Had Your Love」です。この曲を歌うアーティスト、ジェリー・コルベッタは、シュガーローフのメンバーとして活動後に、ソロアルバムとして「JERRY CORBETTA」を1978年にリリースしました。ちなみに、シュガーローフ時代のアルバム「DON'T CALL US -WE'LL CALL YOU」は、ヒット曲「I Got A Song」を含みCD化されているので、聴くことが出来ますが、「I Got A Song」以外は、ロックバンド色が強いため、AORアルバムと言うには個人的に少しヘビーな感じがします。

 今回のアルバム「JERRY CORBETTA」は、プロデューサーにスティーブ・バリ、作曲家陣にボブ・クリュー等を迎え、とても聴きやすいポップな仕上がりになっています。

 1曲目の「Sensitive Soul」でアップテンポにスタートし、ラブソングへと続き、ディスコタッチのソウル系の曲等へ展開するなど、アルバム全体としてはブルーアイドソウル的な印象を受けます。これもやはりスティーブ・バリの影響なのか、もしくはジェリー・コルベッタが本来持ち合わせているポップ、ソウル的なセンスなのかは分かりませんが、AORファンも十分に納得の出来るAOR名盤に相応しい構成です。

 バックミュージシャンには、ジェイ・グレイドン、マイケル・オマーティアン、ヴィクター・フェルドマン、マイク・ベアード、マイク・ポーカロ、グレッグ・マティソン、ビル・チャンプリンなど、言わずと知れたお馴染みAORミュージシャンが参加していることも、安心して聴ける要因です。

 今回、特にオススメの「If I Never Had Your Love」は、彼女と別れる寂しさや幸せだった日々を思い出しながら歌っているような、ふられラブソングで、「もしもめくり逢っていなければ、こんなにつらい想いをせずに済んだのに」と、彼女へのつのる想いを綴っています。感傷的ではありますが、美しいメロディーに、とてもキャッチーなサビのフレーズが決して曲調を暗くせずに名曲に仕立てています。

 ジェリー・コルベッタは、その後、音楽活動は続けても、AOR名盤「JERRY CORBETTA」に匹敵するような名盤は制作しておらず、これだけのセンスを持っているのに、実に残念に思われて仕方がありません。

 何はともあれ、冬になり寒さが増すと、周りの風景も、一層切ないラブソングが似合うようになりますが、クリスマスを前にそうならないようにしたいものですね。今回、紹介したAOR名曲「If I Never Had Your Love」を、アルバム全体の名曲たちとともに、是非、味わってみて下さい。(Night-Plane)

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