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2009年6月

スティーブ・ドーフ/A Little Thing Called Life

 ここ数回は、本来のAORが持つロック寄りな名曲を紹介しましたが、今回は、しっとりと聴かせる名曲を紹介します。

 スティーブ・ドーフは、アメリカではテレビドラマのテーマ曲や、他のアーティストに楽曲を提供する、いわば裏方のソングライターとして活躍している人ですが、彼が楽曲を提供したアーティストは、アン・マレーやケニー・ロジャース、エディ・ラビット、B.J.トーマス、ジョージ・ストレイトなど数知れず、どちらかというとカントリー系やポピュラー系の歌手に馴染みがある人のようです。プロデュースやアレンジしたアーティストにも、クリストファー・クロスやメリサ・マンチェスターなどのAOR系アーティストもおり、顔の広さと仕事の幅の広さを感じる人です。

 さて、今回紹介する名曲は、そんな彼が自分名義でリリースした限定アルバム「ORIGINAL DEMO(2004)からの1曲「A Little Thing Called Life」です。1995年に、アーロン・ネヴィルの「The Tatooed Heart」によって、取り上げられた曲です。

 アルバムのオープニングにふさわしい1曲で、ピアノのイントロから入る、とても雰囲気のある甘い感じの名曲です。日常の出来事を決して大げさに捉えず、「月は沈み、また日は昇る」的な、一日の繰り返しが日常生活であり、そんな些細なことが、毎日の生活であり、人生であり、本当に小さな出来事の連続だが、それは奇跡的なことである、と歌います。そして、毎日を過ごせることに感謝すべき、と歌います。

 決して、宗教的な歌ではありませんが、ラブソングとは違う観点で、このようなことが歌われるのは、とても新鮮です。しかも美しいメロディとサビの素晴らしさに乗せて。CCMとは、違う感動ですよね。

 このアルバムは、全編、ウォーレン・ウィービーがヴォーカルを取り、伸びやかに歌っていますが、全曲が素晴らしい出来です。デモ集とは思えないくらいです。他のアーティストに提供した曲の自身のカバーもありますが、スティーブ・ドーフの才能と魅力を十分に見せつけてくれます。どの曲も派手さはなくシットリとした曲ですが、聴く価値は十二分にあります。ただし、1000枚限定なので、手に入りにくいかも知れません。

 AORアーティストとしては、表には出てこないスティーブ・ドーフですが、職人として、「良い仕事してますね~」と、いった感じです。今回の名曲「A Little Thing Called Life」は、機会があれば是非聴いてみてください。きっと、心に響きますよ。(Night-Plane

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ブロック・ウォルシュ/Paper Doll

 前回のテレンス・ボイランの流れを受けて、今回もロック寄りのAORを紹介します。今回、紹介するアーティスト、ブロック・ウォルシュと言えば、自身のアルバムよりも他のアーティストへの作品提供の方が最近は多く、今では、職人的な裏方というイメージの強いシンガーソングライターですが、彼が1983年にリリースしたアルバム「DATELINE:TOKYO」は、その時代を象徴するかのようなテクノ的な要素を盛り込んだ良質なAORアルバムです。

 AORアーティストの作品には、当時、「TOKYO」の地名がタイトルにつけられることがしばしばありましたが、このアルバムのタイトル曲は、はっきり言って聴いてるこちらが恥ずかしくなるような曲で、「TOKYO」「YOKOHAMA」「ROPPONGI」は、まだ許せるにしても、「BUSHIDO」までも日本語が出てくると、とても安っぽく聴こえてしまい、これはいったいどうなの?と、いう感じになります。今聴くと、曲調もヒューイルイス・アンド・ザ・ニュースの「The Heart of Rock and Roll」のようで、リリース時期も微妙に近いし・・・。まっ、そんなことで、リリース当時は、そんなに聴きこまなかったのですが、そんな中でもやはり名曲はあるもので、今回紹介する名曲「Paper Doll」は、一見、日本のポップスのような雰囲気ですが、アップテンポでなかなかカッコ良い曲です。

 「モデルとしてもてはやされる女性も、実はまだ少女の心を持ち、背伸びをしながら社会を生きる寂しさと孤独を背負っている」という内容を曲の歌詞にしています。この手の題材は当時としては良くありがちですが、メロディーやサビの盛り上がりなど、トータルな仕上がりを見るといかにも売れ線狙いの実に良い作品です。AORの基本、しっかりとロックしています。

 このたぐいの曲を聴くと、やはりAORはカッコ良いと感じますね。

 このアルバムには、アンドリュー・ゴールドがプロデュースとミュージシャンで参加しているほか、スティーブ・ルカサー、ジェフ・ポーカロ、マイケル・ボッツ、ケニー・エドワーズ、トムとディヴィーのファラガーブラザース、グレッグ・プレストピノ、マッシュー・ワイルダーなど、多彩なミュージシャンが関わっています。作曲にも、自身の作品以外にも、グレン・バラードやマーティン・ブライリーなど個性豊かな面々がサポートしています。

 また、「Paper Doll」のようなアップテンポな曲調とは反対に、スローナンバーでもしっかり聴かせてくれます。なかでも「Mystified」は絶品です。また、「Getting Over Losing You」や「Our Special Love」も相当グッドです。その他、典型的な爽やかAORの「This Time」や「Sweet Emotion」もオススメです。

 たまに、先走って先駆的なことをするブロック・ウォルシュですが、(このアルバムでも、新しいロック感覚を試しています)、基本はやはりAORの要素が強く、心に染みてきます。

 ブロック・ウォルシュ作の楽曲は、色々なアーティストの作品で目にすることができますので、彼の名前を探してみるのも楽しいですよ。単なるロック歌手とは違う職人気質のAORアーティストは、やはり良いものですね。(Night-Plane)

 

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